東アジア史から「東北」をみると

東北学院は、創立150周年に向けて、早くも『東北学院150年史』の編集作業に着手しようとしている。その準備委員長である文学部歴史学科の河西晃祐教授からいただいたのが、最近出版されたユニークな教科書『大学で学ぶ東北の歴史』(吉川弘文館・定価1900円+税)である。

教科書の編者は、東北学院大学文学部歴史学科である。私も、経済学部で長いこと西洋経済史を講じてきたが、本学の歴史学科の教員は総勢17名。全国の大学の中でも屈指の充実した陣容である。大学博物館を併設するほか、日本史、西洋史、アジア史はもちろん、考古学、民俗学、そして図書館情報学とその守備範囲は広く、市民に開かれた公開講座や各種シンポジウムなどを通じて学問的成果を確実に社会に還元している。

東北の歴史を論じた類書と比較すると、最新の研究成果として、東アジア史からみた「東北」の歴史が、それぞれの時代区分の中で言及されている。たとえば、倭国が、「蝦夷(エミシ)国」の朝貢を受けているとアピールするために、遣唐使の中にエミシを同行させたこと。江戸幕府が松前口(藩)を通じて「蝦夷地(アイヌ民族)」を支配しているがごとき関係にあることをアピールするために奥羽諸藩に警備を命じ、分領としたこと等々。「中枢―周辺」の関係を問う世界システム論の成果が随所に明らかにされている。

この教科書は、東アジア史、日本史の専門家のみならず、西洋史、考古学、民族史の専門家も参加して、東北の歴史を立体的に分析しており、読みやすく、分かりやすいように工夫されている。卒業生はもちろん、中高生や「秋の夜長」を過ごす市民にも薦めたい一書である。