イチイの木はオンコの木

土樋キャンパスにある本館は歴史のある東北学院を象徴する建物である。その本館の前に一本の老木が立っている。昨年私が着任した時に、これはイチイの木であると教えられた。歴史のある東北学院を象徴する立派な庭木である。しかしながら、昨夏は、枯れ木のような表情を見せたので、そろそろ限界であろう。ついては多賀城の工学部キャンパスの図書館の横にイチイの若木が幾本も生えているので、その中の良木と植え替えるかとのことであった。

 

(中央の庭木がイチイの老木。この庭木はラウンドアバウトの役割を果たしており、木の周りを廻るようにして車が発着する)

 

ところが、このイチイの老木、今年はなぜか元気である。真夏の暑さにもかからず青々としていた。そこで先日、葉をかき分けてよく見ると、子どもの頃よく見かけた朱くて小さな実をつけているではないか。なんと、オンコの木の実である。庭木に詳しい方には、そんなこと今頃知ったのと笑われるであろうが、この立派なイチイの木は、キャラボクといって、イチイの変種なのだ。

(朱くて小さな実。私自身摘まんで口に入れたことがあるが、種子は有毒)

 

私が育った北海道では、イチイのことをオンコと呼ぶ。オンコという表現は、北海道・北東北3県の方言である。私の不明を恥じると同時に、このイチイがオンコであると見抜けなかったのは、私が見てきたオンコは一本幹の直立の木であるのに対して、このキャラボクは、根元から多くの枝が広がり、枝ぶりがよいからであろう。地球温暖化の中、真夏は時々辛そうな表情を見せるが、東北学院を象徴する一本のイチイの老木にもう少し頑張ってもらいたいと願うのは私が北国育ちだからであろうか。

(イギリスの西洋イチイの実。4年前、ウィルトシァのキャッスルクルーム村で撮影)