第9回仙台短編文学賞授賞式

第9回仙台短編文学賞授賞式

仙台短編文学賞の授賞式が仙台文学館で開催された。本学は、この短編文学賞の中に東北大学文学賞という大学生・高校生部門の賞を設けており、受賞者に対する講評者、プレゼンターとして参加してきた。東日本大震災の被災を心に刻むべく出発したこの文学賞も9回を数えた。今回の応募作品数は336編。うち、宮城県からの応募が146編であり、東北6県では全体の56%、地方発の作品が多いものの、全国区の文学賞としても定着しつつある。最年少は11歳、最高齢は90歳と広範な年齢層からの応募があった。

(全体の講評をする木村紅美さん。木村さんは、先日『熊はどこにいるの』で谷崎潤一郎賞に輝いた。小学校から高校まで仙台で育ち、明治学院大学文学部芸術学科の卒業。ゼミの指導教員の四方田犬彦先生は私もよく知っている)

 

今回の選考委員は盛岡市在住の作家木村紅美さんであり、大賞、仙台市長賞、河北新報社賞、プレスアート賞、東北学院大学賞の受賞者が表彰された。私は、東北学院大学賞の作品である志賀久(しが・きゅう)さんの「おそい旅路」の講評をして、表彰状と金一封を東北医科薬科大学医学部の4年生である志賀さんに手渡した。

(東北学院大学賞の志賀さん。将来は精神科医となり、出身地の秋田で働きたいとのこと。文学は書き続けるとのことなので、医学と文学のより大きなスケールにして緻密な作品が期待される)

 

志賀さんの作品について紹介すると、秋田出身の医学生である主人公が祖父の一周忌のために、大学のある仙台の駅東口から故郷秋田の駅東口まで帰る夜行バスの車中で、祖父との思い出を回想する設定になっている。効率や速度が求められる時代にあって、日本海西部地震の震災の記憶、祖父の人柄、祖父の影響が夜行バスの進行のごとく緩やかに想起され、医学生特有の身体描写の巧みさ、地域医療に必要な成人病についての知識、そして、なによりも生命の尊厳への想いを織り込みながら、作品をまとめていく技量は読者の共感を生み出すのである。この作品は、5月末に刊行される東北学院大学刊行『被災学』第3号に掲載されるので、ぜひお読みいただきたい。

(次回第10回選考委員の佐藤厚志さん。東北学院大学文学部英文学科の卒業。2023年に書店の店員をしながら芥川賞を受賞した。震災文学の第一人者である)