政策立案能力を備えた自治体職員の養成

政策立案能力を備えた自治体職員の養成

本学大学院経済学研究科経済データサイエンス専攻は、岩手県矢巾町に次いで、福島県郡山市(人口約31万7千人、椎根健雄市長)とも連携協定を締結した。郡山市は、東北第2位の経済都市であり、自治体行政においても、政策統計課、財政課が経済分析、財政分析を蓄積し、データブック郡山を公表するなど、市政の透明化に向けて先駆的な試みを推進してきた。

(椎根市長とともに協定書を報道陣に提示する。市長の左が、宗形敏広郡山市政策開発部長。私の隣が篠崎剛経済研究科長。その隣がアレイ・ウィルソン専攻主任)

 

今回のデータ分析による連携協定の締結により、これらの統計資料に新しい価値を生み出すデータサイエンスが加わることで、EBPM(Evidence Baced Policy Making「根拠に基づく政策立案」)が可能となり、人口の将来推計を通じた財政収入予想、住人のための公共サービスの規模適正化が可視化され、戦略的な自治体行政が一層鮮明となる。

(概要説明をする篠崎研究科長。篠崎教授のゼミの教え子も、政策開発部DX戦略課DX戦略係として締結式に出席していた)

 

日本における労働人口の減少・少子高齢化により、税収が伸び悩み、地方自治体は危機に瀕している。自治体が医療・福祉・教育等の公共サービスを維持したくとも、税収不足のため困難に直面、公共サービスのスリム化や料金の値上げが、首長選挙の争点とされることから、課題解決が先延ばしになり、ひいては水道管の破裂にみられるような惨事が起こるのである。

(締結式後の懇談風景。今後の郡山市との連携の成果に大いに期待したい)

 

1995年に成立した地方分権推進法により、政府による自治体への機関委任事務が廃止され、自治体はいわば小さな政府として住民に寄り添い、地域の特徴に応じた政策立案ができるようになった。もちろん、データサイエンスだけが政策立案のための道具ではないが、自治体職員が、リカレント、リメディアルによる学び直を通じて、データ処理、データ運用能力を身につけるようになれば、自治体はみずからの長所を伸ばし、少子化・人口減少に対応した戦略的政策立案が可能となる。本学大学院経済学研究科経済データサイエンス専攻の目的は、自治体との共同研究を通じて課題解決案を模索すると同時に、社会人院生を受け入れることによって、データサイエンス人材を東北地方に供給することにある。