
台湾のデジタル企業と協定大学を訪問
卒業式と入学式の合間を縫って台湾のデジタル企業と協定大学を訪問した。
近年、台湾の半導体、デジタル技術の躍進は目覚ましく一度はその様子をこの目で見てみたいということで、(株)元パナソニックUSA会長岩谷(いわたに)英昭氏が主宰する訪台団に加わり、新竹にあるACER本社を訪れた。(株)ACERの最高執行責任者モーリス・チャンCOOより、歓迎のプレゼンテーションを受けた。安くて高性能PCの製造元であった同社がAI(人工知能)を取り込みながら、進化を図っていることが説明され、ショールームに案内された。そこには、メガネを掛けずとも人間の視力に合わせて自動調整されるモニター、最短の経路などPC機能が搭載されているAI自転車、AIによる最大効率化を実現したスマート駐車機、カメラで撮影した物を忘れずに効率よく運べるAIスーツケース等々、未来社会を先取りするような商品が次々と展示されていた。産業革命に匹敵する大きな変化が成し遂げられようとしているのである。
(岩谷台湾訪問団の一行。右から4人目が岩谷団長、その右隣がモーリス・チャンCOO、そして私)
さて、私の仕事は製品の開発ではなく、人間の開発である。翌日、岩谷訪台団と別れて、東北学院大学の協定校として長年交流している天主教輔仁大学に向かった。文字通り、カトリック・キリスト教を建学の精神としている私立総合大学である。コロナ禍による中断の時期もあったが、この20年間、同大学からは45人の交換留学生を受け入れ、本学からは17人の交換留学生を送り出した。学長のYi-Chen Lan先生の暖かい歓迎を受け、本学から随行した岩谷(いわや)幸雄工学部長と同大学のJia-Lein Hsu理工学部長の実務家同士の交渉も進展した。同理工学部長の案内で、理工学部の新棟を案内していただいたが、私立大学にもかかわらず理工学部学生の授業料が人文、社会科学系学部学生の授業料と変わらないことに驚いた。
(天主教輔仁大学の学長室にて。中央がLan学長、その右隣りが日本語学科の教授であるChen-Nan Lai副学長。副学長は東北大学で博士号を取得され、仙台を懐かしんでおられた。その右隣りがHsu理工学部長、私の左が岩谷工学部長)
次に訪問したのは、プロテスタント・キリスト教を建学の精神とする東呉大学である。この大学は、本学と本年度から交換協定書を取り交わし、交換留学を開始する。新規参入者でもあるにもかかわらず、学長のChyan-Long Jan先生が暖かく迎えてくれた。じつは、私の東呉訪問は今回が初めてではない。前職の明治学院大学学長の時期にも表敬訪問をしており、この大学が留学生の受け入れに信頼を持って対応してくれることを熟知している。同大学日本語学科出身の職員の方に同大学自慢の電子歴史博物館を案内していただいたが、パネルに触れる度に変化する面白い展示にワクワクするばかりであった。
(今回訪問した東呉大学外双渓キャンパス正門)
駆け足の旅であったが、台湾のデジタル化は急速なスピードで進化を遂げている。最後に桃園国際空港から仙台直行便に乗るための出国の際に、日本国のパスポートではe-パスポートの出口を通過できなかった。日本国のパスポートがe-パスポートに切り替わるのは今月末からとのことである。いつの間にか日本はデジタル技術の応用に関して後進国になりつつある。未来への構想を明確に打ち出し、デジタル教育と国際教育の振興を通じて、この格差を縮めていきたい。