駐日大韓民国全権大使の来学
お隣の国韓国のパク・チョルヒ駐日大使が来学した。東北学院大学に駐日外国大使が来学したのは、東日本大震災の救援活動の際に駐日米国全権大使が来学して以来のことである。今回パク大使は、松島で開催された宮城県主催の「みやぎアンバサダーサミット」に参加された帰途に本学に立ち寄られたのである。
(五橋キャンパスシュネーダー記念館応接室で、原田理事長とともにパク大使を迎える)
パク大使は、第27代目の駐日大使であり、昨年8月に着任され、日韓国交回復60周年に当たる今年本格的に活動されている。学者出身の大使であり、長年日本政治を研究し、ソウル大学国際大学院長を歴任した。前職は韓国外務省傘下のシンクタンクである国立外交院の院長として、日韓関係の正常化に尽力されてきた。今回、学長表敬訪問ののち、未来の扉センターにおいて、グローバル教育センターが呼び掛けた学生や教職員からなる50名を超える聴衆の前で「ブレない韓日関係への道のり」と題して講演をした。
(パク大使は学生からの質問にも気さくに答えてくれた。質問者は交換留学生として4か月間韓国に留学していた国際学部の2年生。すべて韓国語で通した)
講演は流暢な日本語でなされ、国際関係が緊張する今日の外交防衛問題からはじまって、極端なナショナリズムやイデオロギーに捕らわれないで、日韓の立ち位置の類似性、日韓の経済的文化的交流の広がりを冷静に見通すことの大切さを説いた。講演の後に出席した学生から、トランプ政権発足後の日韓関係、現職大統領の逮捕とその後の行方、両国の地域間交流の意味など、鋭い質問が韓国語や日本語で飛び交ったが、韓国や日本に対する深い学識や洞察から丁寧に答えてくれた。
(未来の扉センターで開催された講演会に参加した学生たちとパク大使を囲んでの記念撮影)
本学の国際学部は2年前から発足したが、嬉しいことに短期間ながらも留学した学生は韓国語で質問し、応答する能力を発揮していた。日本の大学生のアンケートによれば、一番関心のある外国は、アメリカ合衆国でもヨーロッパの諸国でもなく、お隣の韓国である。Kポップに代表される音楽やダンス、映画、旅行や料理、家電製品、半導体で触れる韓国は確かに身近な国なのである。また本学の国際学部には、韓国を専門とする教員が集積し、今回の大使来学が如実に示すように、韓国に関して東日本を代表する教育研究センターを形成しつつある。半世紀前の私の学生時代には、国交が回復されたとはいえ、軍事独裁政権に対する民主化運動が広がりつつあったが、戦争や植民地時代の爪痕が残り、韓国は「近くて、遠い国」であった。いまや解決すべき課題はあるが、「近くて、近い国」である。学生たちには、語学を磨いて大いに学び、留学して自分の眼で確かめ、よき人間関係を構築して、未来の日韓関係を切り開いていってもらいたい。