卒業生の著作『国境を越えたスクラム』

ラグビーは、もちろん観戦であるが、私の好きなスポーツのひとつである。今年度は、COVID-19のために、東北学院大学の恒例行事である第71回青山学院大学定期戦(東京)、第66回北海学園大学定期戦(仙台)は中止、体育会各部の練習は学生部長への届出・許可制のもとに感染症に注意を払いながら行われている。

振り返るに、昨年のラグビーワールドカップ日本大会は夢のような大会であった。日本チームは、強豪アイルランドやスコットランドのチームをなぎ倒し、史上初めて準々決勝にコマを進めた。多くの外国人選手を擁する日本チームがOne Teamを掲げ、勝利に向かって快進撃を遂げる様は、これからのグローバル化はかくあらんという勇気と希望を私たちに与えてくれた。

その興奮が冷めやらぬ間に、本学の職員でラグビー部OBの方からいただいたのが、これから紹介する『国境を越えたスクラム―ラグビー日本代表になった外国人選手たち―』中央公論新社である。著者の山川徹氏は、1977年山形県生まれのノンフィクションライター。山形中央高校と本学ラグビー部で選手として活躍、本学法学部卒業後、國學院大學第2部文学部に編入学した。山川氏は、この著作でもって「2019年度ミズノスポーツライター賞」に輝いた。

(刊行はW杯開催直前の2019年8月10日)

さて、本書のタイトルからして、読者は、ワールドカップで活躍した選手たちに関する記述を期待すると思われるが、内容は異なっている。山川氏は、カギとなる人物の地道なインタビューを重ねながら、日本のラグビー史、とりわけ、外国人選手がどのように来日し、企業、高校、大学、ナショナル・チームに溶け込むようになり、今日の日本チームが形成されてきたかを見事に検証している。その歴史とは、まさに差別と孤独、寛容と協働の歴史であったといっても過言ではない。

(カヴァージャケットをとると、ジャパンの公式ユニフォームと同じデザイン)

本学には、ワールドカップに選手を輩出することはできなかったが、山川氏以外にも、ワールドカップ日本大会に貢献した卒業生がいる。試合会場で選手交代を管理するアシスタント・レフリーを努めた大塚聖氏である。大塚氏は本学ラグビー部で選手として活躍、教養学部卒業後、現在は神奈川県立希望ケ丘高校の英語教員をしながら,関東協会公認レフリーとして関東大学リーグ戦や対抗戦といった大学トップクラスの試合のレフリーも担当し,将来を嘱望されている。たとえナショナル・チームの選手でなくとも、「地の塩・世の光」(マタイによる福音書5章13-16節)として、スポーツ文化の興隆に貢献している卒業生の活躍を誇りに思っている。