『震災学』を刊行し続けることの意味

『震災学』を刊行し続けることの意味

元旦から能登半島地震のニュースがお茶の間を駆け巡った。1月22日現在、死者は232人、安否不明者22人、住家被害は約3万4400棟である。心より哀悼の意を表し、一刻も早いライフラインの復旧や仮設住宅の完成を願うものである。今年は、1995年の阪神淡路大震災から29年、2011年の東日本大震災から13年、2016年の熊本地震から8年を数え、この30年間に4つの大きな地震に見舞われ、多くの命が犠牲になり、多くの人々が被災したことを思うと、改めてこの国の突然の不幸に対する備え、すなわち、震災がもたらす課題を共有し、それを解決するための学問的研究とその成果を政策として実現することの必要性を痛感する。

(東北学院大学刊行の『震災学』は発売元の荒蝦夷によって市販されている)

 

東北学院大学は、東日本大震災によって直接被災した大学であることの自覚から、2012年から『震災学』という総合雑誌を刊行し続けている。地震学、津波工学、防災学、そして震災文学といった特定分野の専門誌ではなく、総合雑誌であるために、研究者の専門的論考のみならず、ジャーナリストや文学者の作品まで幅広く掲載しているのが特徴である。昨年の第17号において、マルチクリエーターのいとうせいこうさんと対談した際に、現在世界で勃発している戦争、疫病の流行、そして地球温暖化による洪水や土砂崩れ等の自然災害による被災を含めて、突然の不幸に人々が襲われる機会が多くなったという意味において、「震災学」を「被災学」という観点からも論じることが大切ではないかと話し合っていた矢先に、能登半島地震である。地震を始めとする被災に対して、『震災学』を通じて、問題共有をはかり、教育、学術研究という大学本来の役割を果たしていきたい。