経済学部大塚ゼミナールの学長表彰
東北学院大学において、授業は、7月6日からゼミや実習等の一部対面授業が始まったが、夏季一斉休暇直前の8月12日まで、原則としてオンライン遠隔授業が続く。
そのような中、嬉しいことがあった。先日、みずほ学術振興財団募集の第61回懸賞論文において、経済学部の大塚芳宏教授(計量分析・データ解析)のゼミナールが経済の部学生3等を受賞した。同財団の懸賞論文は、企業のフィランソロピ―として、法律、経済、工学の分野において、これまで多くの学術活動を奨励してきた。第61回の経済の部学生の受賞者は、3等2本、佳作1本なので、数ある応募作品の中でも、大塚ゼミの論文が高く評価されたことになる。
(本学では、年に数件、顕著な貢献をした学術、芸術、スポーツ団体に対して学長表彰をして、その栄誉を讃えている)
さて、大塚ゼミ3年の3名の学生が書いた論文のテーマは、人口減少が加速化し、都市部への過剰流入が起きている日本経済に対して、都市と地方の賃金格差を分析、どのような政策を通じて、地方からの人口の流失を食い止め、地方経済の振興を図るかという、すぐれて現実的な政策提言である。受賞論文について結論だけを紹介すると、学生たちが提言したことは、設備投資や従業員の教育訓練助成を通じて、農村部における豊富な資源である第1次産業である農業や水産業の生産性を高め、食品加工や流通産業が興隆するという第6次産業の振興なのである。
(学生たちは、静かな口調ながら、自信をもって論文の内容を聞かせてくれた)
私は長年西洋経済史を講じてきた。15世紀のイングランドの農村において、都市と農村の賃金格差を逆転させたのは、14世紀末に流行した感染症ペスト大流行であった。人口の3分の1がペストによって死亡、労働人口の減少により農村における農業労働者の実質賃金が上昇、農民たちは、民富の蓄積によって、農業だけのモノカルチャー(単一栽培)から、手工業生産を営むようになり、半農半工のマニュファクチャー経営に乗り出すという、かの大塚史学のいう「農村工業」の発展である。
(後列が大塚教授と学生たち。私の両脇は学長表彰のお膳立てをしてくれた学生部の千葉部長と小野課長)
今回のCovid-19は、大都市における市中感染の怖さを実感させている。企業のオンラインを用いたテレワークが、どれほど都市から農村への人口移動を促進するか、まだ読めない。しかしながら、ポスト・コロナの時代こそ、農村部において第1次、第2次産業に情報産業が付加されて、外国産品に負けないほど農業や水産業の生産性が高まり、実質賃金が上昇し、食品産業や流通販売が盛んになる第6次産業の興隆という未来図が描けなくもない。科学や教育を通じて、地域にある大学としての先導的な役割を果たしていきたいものである。