仙台学長会議発【緊急要望書】―コロナ禍における来春大卒者の採用支援について―

仙台学長会議には、宮城県内19の国公私大学・短大が加盟している。この仙台学長会議が今回、経済5団体、および宮城県、仙台市に対して【緊急要望書】「コロナ禍における宮城・仙台地区新規大卒者採用支援のお願い」という文書を持参し、手交することになった。私は要望書の発案者として、仙台学長会議代表である宮城教育大学村松隆学長に随行、その役目を果たしているところである。

(7月2日の仙台商工会議所訪問では、多くのマスコミの取材を受けた。左側が仙台学長会議代表の村松隆宮城教育大学学長 )

 

就職は、個人の将来の成長、収入、生きがいの問題であると同時に、社会の豊かさにとって最も大切な問題である、と私は考えている。じつは、今春大卒者の就職率は過去最高であった。ところが急転直下、新型コロナ感染症の拡大により、「緊急事態宣言」が発出され、カネと情報はネットに乗って行き交うが、モノとヒトの流れが遮断されてしまった。その結果、製造業、観光・飲食などのサービス業を中心に経済活動は大打撃を被り、いまや景況感はリーマンショックを下回る。

(中央が宮城県商工会議所連合会鎌田宏会頭。会頭は、本学後援会会長でもある)

 

私は40年近い大学教員生活の中で、学生の就職に関して天国と地獄を見てきた。バブル経済が頂点に達したとき、学生は早々と内定を勝ち取り、内定式と称して海外旅行にまで接待されていた。その後、バブル経済が崩壊。企業は採用を絞り込み、学生の就職活動は困難を極めた。いわゆる「就職氷河期」である。それと、企業内教育に力を入れてきた企業がその余裕を失い、即戦力が欲しいと言い出した。たとえ就職できたとしても、ミスマッチが続き、「七・五・三」という言葉がまことしやかに囁かれた。就職3年以内に、中卒は7割、高卒は5割、大卒は3割が職を離れ、フリーターやニートになるというのである。大学はキャリア教育に力を入れ、「働くこととはなにか」から始まって、短期間の就業体験であるインターンシップまで奨励することによって、学生に自分の将来についての意識づけを図るようになった。

(最近取り壊されたが、JR東日本仙台支社とその広告。この角度からだと「東京横浜へ行くな」と読める)

 

東北学院大学は、長い歴史と卒業生の活躍により、地域での就職においてブランド力に定評のある大学である。今回、仙台学長会議が経済団体に具体的に要望しているのは、就職情報の敏速な周知、web面接の積極的な導入、採用活動期間の延長、土日祝日を利用した採用面接等、コロナ禍の中で、額に汗している学生たちへのエールである。

(仙台市長への手交後、郡和子市長と。市長は、本学の卒業生でもある)

 

確かに就職は、採用側である企業に雇用を維持する体力がないと厳しい。しかし、就職ができないということは、学生個人にとってのみならず、社会や企業にとっても、大きな損失である。失業や生活不安、少子化や治安の悪化、購買力の低下、事業継続の困難は、必ずや地域社会の劣化や地域経済の停滞をもたらす。コロナ禍の中、この負のスパイラルをどこかで断ち切らなければならない。