一つで多様な地域のために

一昨日、卒業式を終え、2621名の学部生と59名の大学院生がそれぞれの想いを胸に秘め学院から巣立っていった。肩の荷を下ろす間もなく、昨日は、本学地域連携センターが担当する「地域の課題演習(地域の課題版)」履修学生である3年生4名が学長室を訪ね、その成果を報告してくれた。

 

訪問してくれたのは、担当教員の千葉先生以下、経営学部千葉君、文学部朝倉君、法学部大沢さん、そして経済学部加藤さんである。この授業は、本学の学生ならば学部のいかんにかかわらず、誰もが受講できる科目であり、本年度は、千葉先生の指導の下に「地域福祉の推進と課題解決」をテーマに、コロナ禍にもかかわらず、対面とオンラインによって9か所の事業所の実地調査を遂行し、課題解決型の学修方法を旨としている。

(報告集のタイトルは『一つで多様な地域のために』副題は「一つの体、多くの部分」であり、新約聖書コリント信徒への手紙1第12章12節~31節に由来する。総合人文学科朝倉君のネーミングが採用された)

 

千葉君からは、地域の課題に対して受動的に対応するのではなく、我が事として取り組むことの大切さを、朝倉君からは、若者が地域住民として「当事者意識」を持つために何が必要かを、大澤さんからはLINEのオープンチャット機能を利用した地域福祉を、加藤さんからは、地元企業と連携した若者の地元定着を、それぞれ聴くことができた。

(手にしている報告集「一つで多様な地域のために」~一つの体、多くの部分~というタイトルには、すべての住民が必要で祝福されるべきだという多様性への願いが込められている)

 

私も学部生時代、地方分権・市民自治を提唱するゼミの恩師が書いた新書をテキストとしてゼミ仲間と輪読したことを思い起こす。当時は、大学において実習調査や課題探求型の授業は数少なく、テキストを読み込むことが課題であった。しかし、そのゼミからは、問題意識を胸に秘め地方自治体に就職した者が何人もいた。それから半世紀。大学における授業スタイルは大きく変化してきているが、若き学生の問題意識と情熱だけは変わらない。本学での学びを通じて、地方創生、地域の課題解決の担い手が多数輩出することを期待したい。