佐藤厚志氏芥川賞受賞を讃える会

佐藤厚志氏芥川賞受賞を讃える会

本学英文学科卒業生佐藤厚志さんが第168回芥川賞を受賞したことは、すでに学長ブログに記した。その後、紺野祐文学部長の発案により、大学と同窓会の共催で「佐藤厚志氏芥川賞受賞を讃える会」(以下、「讃える会」)を開催することになり、昨日、会場となった押川記念ホールには、570人を超える同窓生や市民が足を運んだ。会場では、讃える会に先立って、第6回仙台短編文学賞(同実行委員会主催)の贈賞式が開催され、東北を代表する詩人和合亮一選考委員長の講評後、大賞、仙台市長賞、河北新報社賞、プレスアート賞、東北学院大学賞、それぞれの受賞者へ賞状の授与が行われた。東北学院大学賞は、秋田大学理工学部4年の二之部右京さんの「竹」という作品が選ばれ、私が賞状を読み上げ、選考理由を説明した。

(東北学院大学賞を二之部さんに贈賞する。「竹」という作品は秋田で銀線細工工房を営む主人公の初恋物語である。選び抜かれた言葉遣い、論理の組み立てが秀逸である。この作品は刊行されたばかりの『震災学』第17号に掲載中である)

 

さて、休憩後、文学部椎名雄一郎教授のオルガン演奏、原田浩司宗教部長の祈祷ののち、「讃える会」がはじまった。佐藤さんはいささか緊張気味であったが、人数制限をかけたとはいえ、多くの方々が来場したことに、個人の作品が多くの人々の共感を呼び起こす文学の力を感じざるを得なかった。私は、今回の受賞が東北学院の学生・生徒はもとより、教職員、同窓生にとって大きな喜びであり、励ましと希望とを与えるものであったこと、3月の大学卒業式の告辞において受賞作『荒地の家族』を引き合いに出し、絶望からの救いとして、佐藤さんの文学が追求する人間の誠実さが大きな役割を果たすと伝えたこと、古くは東北学院の教員であった島崎藤村が仙台において『若菜集』を書き上げ、中央文壇へと挑戦したことを話した。そして大学記念品として、校歌の一節にある「世の光 わがほこり」という文字を刻んだ「タラントンの盾」を贈呈した。また森山博東北学院同窓会長からも「表彰状」の贈呈があった。

(記念トークイベント後のサイン会において、直筆のサイン入り『荒地の家族』を手渡されて、喜びを隠せない森山同窓会長)

 

記念トークイベントでは、在仙の出版社荒蝦夷の社長で、仙台短編文学賞実行委員会代表の土方正志さん(本学文学部歴史学科卒)をコーディネイターとして、佐藤さんと、ゼミの恩師である文学部英文学科植松靖男教授との間に、学生時代の想い出、19世紀から20世紀のイギリス文学を学ぶゼミの指導方法などが話された。最後に植松教授から、佐藤さんにノーベル文学賞を受賞した日系人作家カズオ・イシグロ氏のサイン入りの本を贈呈するとのサプライズがあった。

(植松教授は、文学者と小説家との間には画さなくてはならぬ一線はあるが、教え子が小説家になった以上、教師が文学者のまま小説を書かかなくてもいいのかと、自問していた)

 

佐藤さんは、ご承知のとおり、丸善仙台アエル店の店員をしながら、時間を有効に使い、作品を一行一行綴り、今回の受賞となった。また記念トークイベントで分かったことだが、学生時代から作家の道を志し、作家になれるという確信を胸の内に秘めながら、マタイによる福音書25章14-29節が記しているように、神が人間に与えたタラントン(才能、能力)に磨きをかけてきた。どうか健康が守られ、より一層の活躍がなされますように。